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「建設コンサルタント技術者 ―今昔物語―」 第5回

2016-02-23

第2技術部長 松井 義昌

 第5回 「これからの保全技術」

トンネルの天井板の崩落という「起きてはならない痛ましい事故」が発生してしまいました.施設管理者は安全管理として定期点検を実施していたようです.近年,社会資本の老朽化が問題視されるようになりました.交通網の一端を担う橋梁等は,供用開始後,経過年数50年を超えるものが今後急増といわれています.

技術の進歩で近年の構造物の耐用年数は伸びているものの,手を入れなければ経年劣化による老朽は避けられません.人間は定期的に健康診断を受診し,今の自分自身の健康状態を知り,対応していると思います.構造物は,自分の症状を話すことができません.「物言えぬ構造物」の状態を迅速かつ的確に診断し対応することは極めて重要なこと考えます.

ここ数年,これまでの「事後保全」の考え方から「予防保全」へと維持・管理の基本的な考え方が変わってきております.老朽化の進んだ状態で手を加える(補修・補強工事等)とコストが著しく掛かります.そのような状況になる前に構造物の状態を知り,早期対応していくことが構造物の長寿命化に繋がるとの考え方によるものです.これらの一連の対応において,構造物の定期点検はその最初のステップとなります.

構造物保全の初期段階に実施する点検の方法も,これから大きく変化すると言われています.現在の基本は,道路橋点検士による「近接目視点検」です.近接目視とは,点検者が手の届く位置まで近接することを意味します.構造物の置かれた環境においては,リフト車、橋梁点検車を駆使しても近接が困難な場合もあります.現在の橋梁点検要領(国土交通省 H26.6)には,これらの場所への近接としてロープアクセス技術を用いることも記述されています.また、一昨年度には、国土交通省より研究開発として点検技術に関する実用技術の公募もありました.技術運用の中心は最近話題となっているドローンを活用したものでした.実際には,いずれの技術も現在の点検要領を十分に満足するものではなかったようです.

これからの技術展開には,異業種の分野で活躍している技術の特性を生かした技術融合が有効となると期待されます.これまで培われてきた経験・技術を基盤とし,新しい異業種の技術を取り入れた技術展開がこれからの維持管理・保全技術を支えていくものと考えます.近代社会における社会資本の維持管理は,次の世代に「健全な状態」を引き継ぐための大変重要な役割と思います.これからの保全技術を創造し,駆使する技術者として,この道に精進していきたいと思います.

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